【怪人二十面相】(四.魔術師)江戶川亂步|日漢對照








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怪人二十面相(一.序章)


作品︰ 怪人二十面相(四.魔術師)
作者︰ 江戶川亂步
翻譯︰ 小說熊 (日本小說翻譯室)
原文︰ 青空文庫【怪人二十面相】

しばらくのあいだ、ふたりともだまりこくって、青ざめた顔を、見あわせるばかりでしたが、やっと壮太郎氏は、さもいまいましそうに、

「ふしぎだ。」

と、つぶやきました。

二人一時間沉默不語,面面相覷。過了好一會,壯太郎才憤恨地低聲說道:「怎麼可能?」。

「ふしぎですね。」

「真的,怎麼可能?」

壮一君も、おうむがえしに同じことをつぶやきました。しかし、みょうなことに、壮一君は、いっこうおどろいたり、心配したりしているようすがありません。くちびるのすみに、なんだかうす笑いのかげさえ見えます。

壯一也學著壯太郎低聲說道。然而奇怪的是,壯一的神情丁點兒也不驚訝或困擾,甚至嘴角還露出一絲的微笑。

「戸じまりに異状はないし、それに、だれかがはいってくれば、このわしの目にうつらぬはずはない。まさか、賊は幽霊のように、ドアのかぎ穴から出はいりしたわけではなかろうからね。」

「門還好好鎖著,況且要是有人進來,我這雙眼不可能看不到。賊人是不可能像幽靈一樣經匙孔進出的。」

「そうですとも、いくら二十面相でも、幽霊に化けることはできますまい。」

「確實這樣。即使他是二十面相,也不可能化身成幽靈。」

「すると、この部屋にいて、ダイヤモンドに手をふれることができたものは、わしとおまえのほかにはないのだ。」

「那麼說來,能夠在房間內對鑽石下手的人就只有你和我。」

壮太郎氏は、何かうたがわしげな表情で、じっとわが子の顔を見つめました。

壯太郎一臉狐疑,緊緊盯著兒子的臉。

「そうです。あなたかぼくのほかにはありません。」

「對,除了閣下和我就沒有別人。」

壮一君のうす笑いがだんだんはっきりして、にこにこと笑いはじめたのです。

壯一的笑容愈來愈明顯,終於嘻嘻哈哈的笑起來。

「おい、壮一、おまえ何を笑っているのだ。何がおかしいのだ。」

壮太郎氏はハッとしたように、顔色をかえてどなりました。

「喂,壯一。你在笑甚麼?有甚麼可笑?」壯太郎嚇了一跳,臉色一變的大喝起來。

「ぼくは賊の手なみに感心しているのですよ。彼はやっぱりえらいですなあ。ちゃんと約束を守ったじゃありませんか。十重二十重の警戒を、もののみごとに突破したじゃありませんか。」

「我是在佩服賊人的本領啊!他果然厲害,說得出也真的做得到。即使設下重重難關,你看他還不是照樣巧妙闖過嗎?」

「こら、よさんか。おまえはまた賊をほめあげている。つまり、賊に出しぬかれたわしの顔がおかしいとでもいうのか。」

「住口!你又在讚賞那賊人了。你想說我被賊人矇騙很可笑嗎?」

「そうですよ。あなたがそうして、うろたえているようすが、じつにゆかいなんですよ。」

「對呀。這副驚惶失措的模樣確實讓人看得痛快。」

ああ、これが子たるものの父にたいすることばでしょうか。壮太郎氏はおこるよりも、あっけにとられてしまいました。そして、今、目の前にニヤニヤ笑っている青年が、自分のむすこではなく、何かしら、えたいのしれない人間に見えてきました。

啊!這哪裡是孩子對待父親的應有態度?此時的壯太郎與其說是憤怒,不如說是驚訝。壯太郎開始意識到眼前這個笑嬉嬉的青年並不是自己兒子,而是一個不明來歷的陌生人。

「壮一、そこを動くんじゃないぞ。」

「壯一,你站著別動!」

壮太郎氏は、こわい顔をしてむすこをにらみつけながら、呼びりんをおすために、部屋の一方の壁に近づこうとしました。

壯太郎怒氣沖沖盯著兒子,然後向著房間一方的牆壁靠過去,想要按動牆上的電鈴。

「羽柴さん、あなたこそ動いてはいけませんね。」

「羽柴先生,別動的是你才對。」

おどろいたことには、子が父を羽柴さんと呼びました。そして、ポケットから小型のピストルをとりだすと、その手をひくくわきにあてて、じっとおとうさんにねらいをさだめたではありませんか。顔はやっぱりニヤニヤと笑っているのです。

真的出乎意料,兒子竟然把父親叫作羽柴先生。他從口袋裡掏出一支小型手槍,一直保持笑容目不轉睛地瞄準父親。

壮太郎氏は、ピストルを見ると、立ちすくんだまま、動けなくなりました。

壯太郎見到手槍後發呆站著,沒有多走半步。

「人を呼んではいけません。声をおたてになれば、ぼくは、かまわず引き金をひきますよ。」

「你休想把人喚來。你只要發出一聲,我二話不說就會扣下扳機。」

「きさまはいったい何者だ。もしや……。」

「你這傢伙到底是誰?難到你是 …」

「ハハハ……、やっとおわかりになったようですね。ご安心なさい。ぼくは、あなたのむすこの壮一君じゃありません。おしのとおり、あなた方が二十面相と呼んでいる盗賊です。」

「哈哈!看來你終於明白了。你不用擔心,我不是你的兒子壯一。就如你所推測一樣,我就是你們口中所說的那個賊人二十面相。」

壮太郎氏はお化けでも見るように、相手の顔を見つめました。どうしても、とけないなぞがあったからです。では、あのボルネオ島からの手紙は、だれが書いたのだ。あの写真はだれの写真なのだ。

壯太郎滿腹疑團,猶如看著妖怪一樣凝望對方的臉。那封婆羅洲寄來的信到底是誰寫的?相片中的人到底又是誰人?

「ハハハ……、二十面相は童話の中の魔法使いです。だれにでもできないことを、実行してみせるのです。羽柴さん、ダイヤモンドをちょうだいしたお礼に、種明しをしましょうか。」

「哈哈!二十面相就是童話裡的魔術師。任誰都沒可能做到的事,二十面相就能做給你們看。羽柴先生,作為鑽石的回禮,我就為你解開疑團吧。」

怪青年は身の危険を知らぬように、落ちつきはらって説明しました。

這個古怪的青年就像不知自己身處的地方有多危險,冷靜地解釋起來。

「ぼくは、壮一君のゆくえ不明になっていることをさぐりだしました。同君の家出以前の写真も手に入れました。そして、十年のあいだに、壮一君がどんな顔にかわるかということを想像して、まあ、こんな顔をつくりあげたのです。」

「我先前已經查出壯一失踪這回事,也把他離家出走以前的相片弄到手。我估算他這十年來的容貌起了甚麼變化後,就易容成現在這個模樣。」

彼はそういって、自分のほおをピタピタとたたいてみせました。

他一邊說一邊輕拍自己的臉龐。

「ですから、あの写真は、ほかでもない、このぼくの写真なのです。手紙もぼくが書きました。そして、ボルネオ島にいるぼくの友だちに、あの手紙と写真を送って、そこからあなたあてに郵送させたわけですよ。お気のどくですが、壮一君はいまだにゆくえ不明なのです。ボルネオ島なんかにいやしないのです。あれはすっかり、はじめからおしまいまで、この二十面相のしくんだお芝居ですよ。」

「所以相片裡的人不是別人,正正就是本人,而信也是我所寫的。寫完以後,我把信和相片寄給婆羅洲的一位朋友,然後再請他把信和照片從當地寄給閣下。真可憐!壯一不在婆羅洲,他現在還是下落不明。事情由始至終都是我這個二十面相所編的戲。」

羽柴一家の人々は、おとうさまもおかあさまも、なつかしい長男が帰ったという喜びに、とりのぼせて、そこにこんなおそろしいカラクリがあろうとは、まったく思いもおよばなかったのでした。

因為大家一直惦掛的長子歸來,無論是父親、母親、以至羽柴家各人都高興得沖昏了頭腦,根本沒想過當中暗藏這可怕的詭計。

「ぼくは忍術使いです。」

「我是懂忍術的。」

二十面相は、さも、とくいらしくつづけました。

二十面相彷彿很自豪地繼續說。

「わかりますか。ホラ、さっきのピンポンの玉です。あれが忍術の種なんです。あれはぼくがポケットからじゅうたんの上にほうりだしたのですよ。あなたは、少しのあいだ玉に気をとられていました。机の下をのぞきこんだりしました。そのすきに宝石箱の中から、ダイヤモンドをとりだすのは、なんのぞうさもないことでした。ハハハ……、では、さようなら。」

「你知道嗎?這套忍術的竅門就是剛才那個乒乓球,它是我從口袋裡掏出來拋到地毯上的。你一時間因為乒乓球而分神望向桌下,於是我就毫不費力的趁這時把鑽石從盒中拿走。哈哈!我就說到這裡好了,後會有期。」

賊はピストルをかまえながら、あとずさりをしていって、左手で、かぎ穴にはめたままになっていたかぎをまわし、サッとドアをひらくと、廊下へとびだしました。

賊人一邊往後退,一邊拿著手槍指向壯太郎。他用左手扭動插在匙孔內的鑰匙,迅速把門打開後逃到走廊去。

廊下には、庭にめんして窓があります。賊はその掛け金をはずして、ガラス戸をひらき、ヒラリと窓わくにまたがったかと思うと、

「これ、壮二君のおもちゃにあげてください。ぼくは人殺しなんてしませんよ。」

といいながら、ピストルを部屋の中へ投げこんで、そのまま姿を消してしまいました。二階から庭へととびおりたのです。

走廊裡有一扇面向庭園的窗。賊人打開窗鎖把玻璃窗推開,敏捷的身驅在跨出窗外的同時回身把手槍拋回屋內說:「這就留給壯二做玩具吧。我才不會殺人。」然後從二樓跳下庭園,消失得無影無踪。

壮太郎氏は、またしても出しぬかれました。

壯太郎又一次被矇騙了。

ピストルはおもちゃだったのです。さいぜんから、おもちゃのピストルにおびえて、人を呼ぶこともできなかったのです。

手槍只是玩具。壯太郎從開始就因為懼怕這玩具手槍而不敢呼喚人來。

しかし、読者諸君はご記憶でしょう。賊のとびおりた窓というのは、少年壮二君が、夢にみたあの窓です。その下には、壮二君がしかけておいた鉄のわなが、のこぎりのような口をひらいて、えものをまちかまえているはずです。夢は正夢でした。すると、もしかしたら、あのわなも何かの役にたつのではありますまいか。

然而,各位讀者還記得嗎?賊人往外跳的那扇窗就是少年壯二夢中的那扇窗。那扇窗下放著壯二安放的捕獸器,那捕獸器這時理應還是打開著滿佈鋸齒的鐵箍在等待著獵物的到來。夢境真的成真了,說不定那捕獸器還真的能派上用場。

ああ、もしかしたら!

嗯,說不定呢!





第四部份完

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怪人二十面相(一.序章)
怪人二十面相(二.捕獸器)
怪人二十面相(三.是人?是魔?)
怪人二十面相(四.魔術師)
怪人二十面相(五.池塘中)
怪人二十面相(六.樹上的怪人)
怪人二十面相(七.壯二的下落)
怪人二十面相(八.少年偵探)
怪人二十面相(九.佛像的奇跡)
怪人二十面相(十.陷阱)
怪人二十面相(十一.七件工具)

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