【怪人二十面相】(七.壯二的下落)江戶川亂步|日漢對照







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怪人二十面相(一.序章)


作品︰ 怪人二十面相(七.壯二的下落)
作者︰ 江戶川亂步
翻譯︰ 小說熊 (日本小說翻譯室)
原文︰ 青空文庫【怪人二十面相】

松野の語ったところによりますと、けっきょく、賊は、つぎのようなとっぴな手段によって、まんまと追っ手の目をくらまし、大ぜいの見ている中をやすやすと逃げさったことがわかりました。

跟據松野的敍述,大家得知賊人利用了以下的瘋狂手段,最終瞞過追捕人員,在眾目睽睽下輕易逃走了。

人々に追いまわされている間に、賊は庭の池にとびこんで、水の中にもぐってしまったのです。でも、ただもぐっていたのでは呼吸ができませんが、ちょうどそのへんに壮二君がおもちゃにして、すてておいた、節のない竹ぎれが落ちていたものですから、それを持って池の中へはいり、竹の筒を口にあて、いっぽうのはしを水面に出し、しずかに呼吸をして、追っ手の立ちさるのを待っていたのでした。

被眾人追捕期間,賊人跳進了池塘並潛身水中。但因潛入水中就不能呼吸,而且剛巧附近又有一根被壯二當作玩具後丟棄的通心竹筒,於是他拿起竹筒潛入池中,把竹筒一端含在口中,把另一端伸出水面。一邊悄悄呼吸,一邊等待追捕人員離去。

ところが、人々のあとに残って、ひとりでそのへんを見まわしていた松野運転手が、その竹ぎれを発見し、賊のたくらみを感づいたのです。思いきって竹ぎれをひっぱってみますと、はたして、池の中からどろまみれの人間があらわれてきました。

但當其他人都離去以後,仍然獨自在現場四望的司機松野卻發現了那根竹筒,而且還察覺到賊人的計謀。他不顧一切把竹筒拉出水面時,池中果然出現了一個滿身污泥的人。

そこで、やみの中の格闘がはじまったのですが、気のどくな松野は救いをもとめるひまもなく、たちまち、賊のために組みふせられ、賊がちゃんとポケットに用意していた絹ひもでしばりあげられ、さるぐつわをされてしまったのです。そして、服をとりかえられたうえ、高い木のまたへかつぎあげられたというしだいでした。

他們於是在黑暗中打鬬起來。可憐的松野無法向其他人求援,不一會就被賊人按倒地上,身體被賊人用預先放在口袋的繩索所綑綁,口中也被塞著東西無法呼叫。然後他被賊人對換了身上的衣服,抬到高高的樹椏上。

そうわかってみますと、壮二君たちを学校へ送っていった運転手は、いよいよにせ者ときまりました。たいせつなお嬢さん坊ちゃんが、人もあろうに、二十面相自身の運転する自動車で、どこかへ行ってしまったのです。人々のおどろき、おとうさまおかあさまのご心配は、くどくど、説明するまでもありません。

明白事情始末後,大家斷定接送壯二二人回校的司機是冒充的。最要緊的小姐和少爺偏偏坐上了二十面相所駕駛的汽車。不用多說也知道眾人有多吃驚,父母二人有多擔心。

まず早苗さんの行く先、門脇中学校へ電話がかけられました。すると、意外にも早苗さんはぶじに学校へついていることがわかりました。では、賊はべつに誘かいするつもりではなかったのだなと、大安心をして、つぎには壮二君の学校へ電話をしてたずねますと、もう授業がはじまっているのに、壮二君の姿は見えないという返事です。それを聞くと、おとうさまおかあさまの顔色がかわってしまいました。

他們首先致電到早苗行程的目的地門脇中學,但想不到她已經安全抵達。得知賊人沒有把她綁架的意圖,大家都鬆了一口氣。然後他們再致電到壯二的學校,這時學校已經上課,但校方卻說沒有看見壯二的蹤影。聽到這消息以後,父母二人都是面色大變。

賊はわなをしかけたのが、壮二君であることを知ったのかもしれません。そして、足にうけた傷のふくしゅうをするために、壮二君だけを誘かいしたのかもしれません。

賊人或許已經知道壯二就是設下陷阱的人。說不定為了報復腳傷一事,於是就單單綁架了壯二一人。

さあ、大さわぎになりました。中村捜査係長は、ただちにこのことを警視庁に報告し、東京全都に非常線をはって、羽柴家の自動車をさがしだす手配をとりました。さいわい自動車の型や番号はわかっているのですから、手がかりはじゅうぶんあるわけです。

一時間全場譁然。搜查科中村科長立即向總部報告,獲總部批准在全東京設下路障找尋羽柴家的汽車。幸好知道汽車型號和車牌號碼,找起來也並非莫無頭緒。

壮太郎氏は、ほとんど三十分ごとに、学校と警視庁とへ電話をかけて、その後のようすをたずねさせていましたが、一時間、二時間、三時間、時はようしゃなくたっていくのに、壮二君の消息は、いつまでもわかりませんでした。

壯太郎幾乎每三十分鐘便致電到學校及警察總部詢問情況。然而時間卻無情流逝,儘管過了一小時、兩二時、三小時,卻一直打聽不到壯二的消息。

ところが、その日のお昼すぎになって、ひとりのうすよごれた背広に鳥打の青年が、羽柴家の玄関にあらわれて、みょうなことをいいだしました。

這天下午,羽柴家的大門卻出現了一名身穿骯髒西裝、頭戴鴨舌帽的青年,他說了一些奇怪的話。

「あたしは、おたくの運転手さんにたのまれたんですがね。運転手さんが、なんだか途中できゅうに私用ができたとかで、たのまれて自動車を運んできたのですよ。車は門の中へ入れておきましたから、しらべて受けとってほしいんですがね。」

「是府上司機叫我來的。府上司機說他有急事要在途中離去,吩咐我把汽車駛到這裡。我已經把汽車駛進來了,請你們查收吧。」

秘書が、そのことを奥へ報告する。それっというので、主人の壮太郎氏や支配人の近藤老人が、玄関へかけだして、車をしらべてみますと、たしかに羽柴家の自動車にちがいありません。しかし、中にはだれもいないのです。壮二君はやっぱり誘かいされてしまったのです。

秘書向屋內報告了此事。主人壯太郎和近藤老管家於是跑出大門查看汽車,果然是他們羽柴家的汽車,但車中卻沒有別人,壯二果然被拐走了。

「おや、こんなみょうな封筒が落ちていますよ。」

「奇怪了!這裡有個信封。」

近藤老人が、自動車のクッションの上から、一通の封書を拾いあげました。その表には「羽柴壮太郎殿必親展」と大きく書いてあるばかり、裏を見ても、差出人の名はありません。

老管家近藤在汽車的座墊上拾起一個信封,正面寫著「羽柴壯太郎先生收」的幾個大字,望向信封背後,卻沒有寫上寄信人的姓名。

「なんだろう。」

と、壮太郎氏が封をひらいて、庭に立ったまま読んでみますと、そこには左のようなおそろしいことばが書きつらねてあったのです。

「到底怎麼回事?」

壯太郎打開信封,就這樣站在花園裡讀起信來。信中寫著以下的可怕說話。

昨夜はダイヤ六個たしかにちょうだいしました。持ちかえって、見れば見るほどみごとな宝石、家宝としてたいせつに保存します。

羽柴壯太郎先生大鑒:

在下昨晚收下了閣下的六顆鑽石。回去後愈看就愈覺得是非凡的寶石,在下會好好珍藏並視之為傳家之寶。

しかし、お礼はお礼として、少しおうらみがあるのです。何者かが庭にわなをしかけておいて、ぼくの足に全治十日間の傷をおわせたことです。ぼくは損害を賠償してもらう権利があります。そのためにご子息壮二君を人質としてつれてかえりました。

雖然感謝閣下,但在下還是有些不滿。因為某人在花園內設置陷阱,令我因而受了腳傷,需要十天才能痊癒。由於在下理應獲得賠償,於是就把令公子壯二帶回來作人質了。

壮二君は今、拙宅のつめたい地下室にとじこめられて、暗やみの中でシクシク泣いております。壮二君こそ、あののろわしいわなをしかけた本人です。これくらいのむくいは当然ではありますまいか。

壯二現在正關在寒舍的冰冷地牢內,在漆黑中不停啜泣。壯二就是那個設下可惡陷阱的人,因此在下這樣對待他也是理所當然的。

ところで、損害の賠償ですが、それには、ぼくはご所蔵の観世音像を要求します。

作為受傷的賠償,希望閣下能把閣下收藏著的觀世音像贈予在下。

ぼくは昨日、はからずも貴家の美術室を拝見する光栄を得たのですが、そのりっぱさにおどろきいりました。中でもあの観世音像は、鎌倉期の彫刻、安阿弥の作と説明書きがありましたが、いかにも国宝にしたいほどのもの、美術ずきのぼくは、ほしくてほしくてたまりませんでした。そのとき、どうあっても、この仏像だけはちょうだいしなければならないと、かたく決心したのです。

在下真的沒想到昨天竟然有幸參觀閣下的收藏室,收藏室的氣派實在令人嘆為觀止。當中那個寫著鎌倉時期安阿彌彫刻的觀世音像就更是堪稱國寶。向來喜歡美術的我,實在想要得不得了。那刻我就下定決心,無論如何也要把它拿到手。

ついては、今夜正十時、ぼくの部下のもの三名が、貴家に参上しますから、だまって美術室に通していただきたいのです。彼らは観世音像だけを荷づくりして、トラックにつんで運びさる予定になっております。人質の壮二君は、仏像とひきかえに貴家へもどるようにはからいます。約束は二十面相の名にかけてまちがいありません。

今天晚上十時正,在下的三名手下會到府上拜訪,希望閣下不要阻撓他們,讓他們來到收藏室把觀世音像打包搬到貨車上離去。作為交換觀世音像的條件,在下亦會把人質壯二送回府上。本人以二十面相之名向閣下保證。

このことを警察に知らせてはなりません。また部下のトラックのあとをつけさせてはいけません。もしそういうことがあれば、壮二君は永久に帰らないものとおぼしめしください。この申し出はかならずご承諾を得るものと信じますが、念のためご承諾のせつは、今夜だけ十時まで正門をあけはなっておいてください。それを目じるしに参上することにいたします。

二十面相より

羽柴壮太郎殿

此事絕對不能通報警方,亦不可跟蹤在下手下的貨車。假若做了這些事情,就請不要指望壯二還能回來。相信閣下定必同意在下提議。但慎重起見,若閣下真的同意,就請在今天晚上十時前把大門打開,我的手下看到這暗號便會前來拜訪。

二十面相啟

なんという虫のよい要求でしょう。壮太郎氏はじめ、こぶしをにぎってくやしがりましたが、壮二君というかけがえのない人質をとられては、どうすることもできません。ざんねんながら、このむちゃな申し出に応ずるほかに手立てはないように思われます。

真是目中無人的要求!壯太郎起初還緊握拳頭很不甘心,然而壯二這個人質對壯太郎而言卻是太重要了。想不到其他辦法下,壯太郎也只能不甘心地答應賊人這個過份的要求。

なお、賊にたのまれて自動車を運転してきた青年をとらえて、じゅうぶん詮議しましたけれど、彼はただ、いくらかお礼をもらってたのまれただけで、賊のことは何も知りませんでした。

至於被賊人拜託把汽車駛回來的青年,經過一番盤問後,得知那人只是收了報酬把汽車駛回來而已,對賊人的事根本一無所知。





第七部份完

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怪人二十面相(一.序章)
怪人二十面相(二.捕獸器)
怪人二十面相(三.是人?是魔?)
怪人二十面相(四.魔術師)
怪人二十面相(五.池塘中)
怪人二十面相(六.樹上的怪人)
怪人二十面相(七.壯二的下落)
怪人二十面相(八.少年偵探)
怪人二十面相(九.佛像的奇跡)
怪人二十面相(十.陷阱)
怪人二十面相(十一.七件工具)

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