【怪人二十面相】(五.池塘中)江戶川亂步|日漢對照











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怪人二十面相(一.序章)


作品︰ 怪人二十面相(五.池塘中)
作者︰ 江戶川亂步
翻譯︰ 小說熊 (日本小說翻譯室)
原文︰ 青空文庫【怪人二十面相】

賊がピストルを投げだして、外へとびおりたのを見ると、壮太郎氏はすぐさま、窓のところへかけつけ、暗い庭を見おろしました。

壯太郎看見賊人丟下手槍跳出窗外,於是立即跑近窗邊往下望向陰暗的花園。

暗いといっても、庭には、ところどころに、公園の常夜燈のような、電燈がついているので、人の姿が見えぬほどではありません。

雖說陰暗,但四處都亮起了跟公園常明燈一樣的電燈,所以也不是無法看見賊人的身影。

賊はとびおりたひょうしに、一度たおれたようすですが、すぐムクムクとおきあがって、ひじょうな勢いでかけだしました。ところが、案のじょう、彼は例の花壇へとびこんだのです。そして、二―三歩花壇の中を走ったかと思うと、たちまち、ガチャンというはげしい金属の音がして、賊の黒い影は、もんどり打ってたおれました。

賊人跳下來時栽了一跤,但很快就站起來再次奔跑。然而不出所料,他走進了先前提及的花圃。正當他跑過這約兩三步寬的花圃時,突然傳來「錚」的一聲金屬聲,只見賊人黑色的身影翻了個筋斗倒在地上。

「だれかいないか。賊だ。賊だ。庭へまわれ。」

壮太郎氏が大声にどなりました。

「誰人在呀?賊人在花園,快追!」壯太郎大聲叫嚷起來。

もし、わながなかったら、すばやい賊は、とっくに逃げさっていたことでしょう。壮二君の子どもらしい思いつきが、ぐうぜんしたのです。賊が、わなをはずそうともがいているあいだに、四ほうから人々がかけつけました。背広服のおまわりさんたち、秘書たち、それから運転手、総勢七人です。

假若沒有那個捕獸器,恐怕身手敏捷的賊人早就逃之夭夭。壯二那幼稚的主意竟然碰巧奏效。正當賊人忙於掙脫捕獸器時,身穿西裝的巡警、秘書和司機等七人已經從四方八面趕到。

壮太郎氏もいそいで階段をおり、近藤老人とともに、階下の窓から、電燈を庭に向けて、捕り物の手だすけをしました。

壯太郎也趕忙從二樓跑下來,跟近藤老管家一起拿著手電筒從樓下的窗戶照向花園,幫助其他人找尋賊人。

ただみょうに思われたのは、せっかく買いいれた猛犬のジョンが、このさわぎに姿をあらわさないことでした。もし、ジョンが加勢してくれたら、まんいちにも、賊をとりにがすようなことはなかったでしょうに。

然而奇怪的是,正當各人吵吵嚷嚷追捕賊人時,特意買來的惡犬「約翰」卻不知到哪裡去了。假若約翰也加入追捕,賊人決計不可能成功逃脫。

二十面相が、やっとわなをはずして、起きあがったときには、手に手に懐中電燈を持った追っ手の人たちが、もう十メートルの間近にせまっていました。それもいっぽうからではなくて、右からも、左からも、正面からもです。

二十面相終於掙脫了捕獸器。當他站起來時,拿著電筒追捕他的人已經逼近到只有十米的距離。他們不只從一方而來,而是從左方、右方、前方三方而來。

賊は黒い風のように走りました。いや、弾丸のようにといったほうがいいかもしれません。追っ手の円陣のいっぽうを突破して、庭の奥へと走りこみました。

賊人就如疾風般奔跑。不,說他跟子彈一樣或許更加貼切。他突破了追捕人員的包圍,走向花園的深處。

庭は公園のように広いのです。築山があり、池があり、森のような木立ちがあります。暗さは暗し、七人の追っ手でも、けっして、じゅうぶんとはいえません。ああ、こんなとき、ジョンさえいてくれたら……。

花園就如公園一樣寬廣,內裡設有人工山、池塘和猶如樹林一樣的大叢林。環境確實陰暗,即使是七人追捕也實在談不上人手充足。啊!這時候假如約翰在這裡就好了。

しかし、追っ手は必死でした。ことに三人のおまわりさんは、捕り物にかけては、腕におぼえの人々です。賊が築山の上のしげみの中へかけあがったと見ると、平地を走って、築山の向こうがわへ先まわりをしました。あとからの追っ手と、はさみうちにしようというわけです。

追捕人員拚命追趕。三位巡警是追捕犯人的能手。當他們看見賊人跑往人工山上的叢林時,就立即從平地繞到人工山背後搗住賊人的去路,與隨後趕到的人員形成前後夾擊之勢。

こうしておけば、賊は塀の外へ逃げだすわけにはいきません。それに、庭をとりまいたコンクリート塀は、高さ四メートルもあって、はしごでも持ちださないかぎり、乗りこえるすべはないのです。

這樣一來,賊人就無法逃出圍牆之外。況且花園四周的混凝土圍牆高達四米,假若沒有梯子根本不可能翻過。

「アッ、ここだっ、賊はここにいるぞ。」

秘書のひとりが、築山の上のしげみのなかでさけびました。

「喂!賊人就在這裡。」一位秘書從人工山上大聲呼喊。

懐中電燈の丸い光が、四ほうからそこへ集中されます。しげみは昼のように明るくなりました。その光の中を、賊は背中をまるくして、築山の右手の森のような木立ちへと、まりのようにかけおります。

手電筒射出來的圓形光線從四方八面聚集到人工山上,叢林變得猶如日間一樣明亮。在這些光線下,賊人彎著腰,像個圓球一樣跑向人工山右邊那個猶如樹林的叢林。

「逃がすなっ、山をおりたぞ。」

「他跑下山了,大家不要讓他逃掉!」

そして、大木の木立ちのなかを、懐中電燈がチロチロと、美しく走るのです。

然後可以看見一把把發出亮光的手電筒在叢林間美麗地閃動。

庭がひじょうに広く、樹木や岩石が多いのと、賊の逃走がたくみなために、相手の背中を目の前に見ながら、どうしてもとらえることができません。

花園非常寬廣,到處都是樹木和石頭,加上賊人身手矯捷,即使賊人就在眼前,追捕人員卻始終無法把他逮住。

そうしているうちに、電話の急報によって、近くの警察署から、数名の警官がかけつけ、ただちに塀の外をかためました。賊はいよいよ袋のネズミです。

這時候,附近的警署因為收到報案電話,所以派來了幾名警員。他們此時都駐守在圍牆之外。賊人已經成了甕中之鱉。

邸内では、それからまたしばらくのあいだ、おそろしい鬼ごっこがつづきましたが、そのうちに、追っ手たちは、ふと賊の姿を見うしなってしまいました。

捉迷藏的戲碼在大宅內持續上演了好一會,追捕的人員突然發現失去了賊人踪影。

賊はすぐ前を走っていたのです。大きな木の幹をぬうようにして、チラチラと見えたりかくれたりしていたのです。それがとつぜん、消えうせてしまったのです。木立ちを一本一本、枝の上まで照らして見ましたけれど、どこにも賊の姿はないのです。

賊人原先還在眼前的大樹之間時隱時現的走過,此時卻突然消失得無影無踪。雖然大家用燈光照遍了每棵大樹以至它們的每根樹枝,但始終看不見賊人的身影。

塀外には警官の見はりがあります。建物のほうは、洋館はもちろん、日本座敷も雨戸がひらかれ、家中の電燈があかあかと庭を照らしているうえに、壮太郎氏、近藤老人、壮二君をはじめ、お手伝いさんたちまでが、縁がわに出て庭の捕り物をながめているのですから、そちらへ逃げるわけにもいきません。

圍牆以外有著警員看守。大宅內的西洋公館當然不在話下,就是日式房子的擋雨板也都被人拿下,屋內的光線把花園照得非常明亮。加上壯太郎、近藤老管家、壯二和一眾傭人都走出檐廊盯著,賊人根本不可能從這裡逃出去。

賊は庭園のどこかに、身をひそめているにちがいないのです。それでいて、七人のものが、いくらさがしても、その姿を発見することができないのです。二十面相はまたしても、忍術を使ったのではないでしょうか。

賊人必定是藏身於花園之內,但追捕他的七人卻怎樣也無法找到他的身影。難道二十面相又再次使用了他的忍術?

けっきょく、夜の明けるのを待って、さがしなおすほかはないと一しました。表門と裏門と塀外の見はりさえげんじゅうにしておけば、賊は袋のネズミですから、朝まで待ってもだいじょうぶだというのです。

最終大家決定留待天明再行搜索。他們認為賊人既然已成甕中之鱉,只要嚴密看守前門、後門以及圍牆外的地方,等到早上再找也不成問題。

そこで、追っ手の人々は、邸外の警官隊を助けるために、庭をひきあげたのですが、ただひとり、松野という自動車の運転手だけが、まだ庭の奥にのこっていました。

因此,追捕人員撤離花園到門外幫助警員看守,只有司機松野仍然留在花園深處。

森のような木立ちにかこまれて、大きな池があります。松野運転手は人々におくれて、その池の岸を歩いていたとき、ふとみょうなものに気づいたのです。

在那猶如樹林一樣的叢林中央有一個大池塘。當各人離去後,司機松野沿著池塘走著,這時他留意到一件奇怪的事情。

懐中電燈に照らしだされた池の水ぎわには、落ち葉がいっぱいういていましたが、その落ち葉のあいだから、一本の竹ぎれが、少しばかり首を出して、ユラユラと動いているのです。風のせいではありません。波もないのに、竹ぎれだけが、みょうに動揺しているのです。

他用手電筒照向池塘,發現池塘近岸的水面上飄浮著很多落葉,落葉間露出一根竹筒的頂端在池水中微微晃動。這不是風的緣故。池塘沒有泛起一絲漣漪,但竹筒卻在奇怪地晃動。

松野の頭に、あるひじょうにとっぴな考えが浮かびました。みんなを呼びかえそうかしらと思ったほどです。しかし、それほどの確信はありません。あんまり信じがたいことなのです。

這時松野腦裡閃出一個瘋狂的猜想,他甚至想呼喚大家回來。但是他卻不太肯定這想法是否真確,因為這猜想實在令人難以入信。

彼は電燈を照らしたまま、池の岸にしゃがみました。そして、おそろしいうたがいをはらすために、みょうなことをはじめたのです。

他亮著手電筒蹲在池邊,為了證實這個可怕的猜想,他幹起一件奇怪的事來。

ポケットをさぐって、鼻紙をとりだすと、それを細くさいて、ソッと池の中の竹ぎれの上に持っていきました。

他從口袋拿出一張紙巾,從紙巾撕下一小片,輕輕把它拿到池塘竹筒的上方。

すると、ふしぎなことがおこったのです。うすい紙きれが、竹の筒の先で、ふわふわと上下に動きはじめたではありませんか。紙がそんなふうに動くからには、竹の筒から、空気が出たりはいったりしているにちがいありません。

此時發生的事情實在令人難以置信。薄薄的小紙條開始在竹筒上微微擺動。從小紙條擺動的情況來看,竹筒內必定是有空氣正在流進流出。

まさかそんなことがと、松野は、自分の想像を信じる気になれないのです。でも、このたしかなしょうこをどうしましょう。命のない竹ぎれが、呼吸をするはずはないではありませんか。

松野無法相信自己的猜想,然而卻又證據確鑿。試問沒有生命的竹筒又怎會呼吸?

冬ならば、ちょっと考えられないことです。しかしそれは、まえにも申しましたとおり、秋の十月、それほど寒い気候ではありません。ことに二十面相の怪物は、みずから魔術師と称しているほど、とっぴな冒険がすきなのです。

假若是冬天,事情也許有點難以想像。但現在就如先前所說正值深秋十月,天氣還不算十分寒冷。尤其是二十面相這怪物經常自詡為魔術師,自然就更喜歡這類瘋狂的冒險行為。

松野はそのとき、みんなを呼べばよかったのです。でも、彼は手がらをひとりじめにしたかったのでしょう。他人の力を借りないで、そのうたがいをはらしてみようと思いました。

假若這時松野把大家叫來就好了,但他卻想獨佔功勞。他不願借助別人力量,準備自己一人解開疑竇。

彼は電燈を地面におくと、いきなり両手をのばして、竹ぎれをつかみ、ぐいぐいと引きあげました。

他把手電筒放在地上,突然伸出雙手抓住竹筒用力往上拉。

竹ぎれは三十センチほどの長さでした。たぶん壮二君が庭で遊んでいて、そのへんにすてておいたものでしょう。引っぱると、竹はなんなくズルズルとのびてきました。しかし、竹ばかりではなかったのです。竹の先には池のどろでまっ黒になった人間の手が、しがみついていたではありませんか。いや、手ばかりではありません。手のつぎには、びしょぬれになった、海坊主のような人の姿が、ニューッとあらわれたではありませんか。

竹筒長約三十公分,大概是壯二在花園內遊玩時丟下的。當松野拉著竹筒時,竹筒輕易的就從水面拉出,但是拉出來的可不只竹筒,竹筒上還有一隻從池塘裡伸出來抓住一端的黑色的手。不,還不只是手。這隻手露出水面以後,一個全身濕透猶如海怪一樣的人竟然嚇然在水中出現。





第五部份完

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怪人二十面相(二.捕獸器)
怪人二十面相(三.是人?是魔?)
怪人二十面相(四.魔術師)
怪人二十面相(五.池塘中)
怪人二十面相(六.樹上的怪人)
怪人二十面相(七.壯二的下落)
怪人二十面相(八.少年偵探)
怪人二十面相(九.佛像的奇跡)
怪人二十面相(十.陷阱)
怪人二十面相(十一.七件工具)

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