【怪人二十面相】(十一.七件工具)江戶川亂步|日漢對照



一生追隨源義經的弁慶背上的七武具包括薙刀、草耙、大槌、刺又、大鋸、鉞及鐵棒等武器





(假若這是閣下首次進入這網誌,歡迎從故事的第一部分開始看。)
怪人二十面相(一.序章)


作品︰ 怪人二十面相(十一.七件工具)
作者︰ 江戶川亂步
翻譯︰ 小說熊 (日本小說翻譯室)
原文︰ 青空文庫【怪人二十面相】

小林少年はほとんど二十分ほどのあいだ、地底の暗やみの中で、ついらくしたままの姿勢で、じっとしていました。ひどく腰を打ったものですから、痛さに身動きする気にもなれなかったのです。

小林在差不多二十分鐘內一直保持掉下來的姿勢,靜靜躺臥在地下黑暗的深處。腰部因為摔得厲害,身體都無法動彈起來。

そのまに、天井では、二十面相がさんざんあざけりのことばをなげかけておいて、おとしあなのふたをピッシャリしめてしまいました。もう助かる見こみはありません。永久のとりこです。もし賊がこのまま食事をあたえてくれないとしたら、だれひとり知るものもないあばらやの地下室でうえ死にしてしまわねばなりません。

二十面相盡情嘲笑小林,然後把天花板上陷阱的蓋子狠狠關上。看來小林已經逃脫無望,無止境地被困在這裡。假若怪盜就這樣不給他食物,他就只會死在這不為人知的破舊房子的地下室內。

年はもいかぬ少年の身で、このおそろしい境遇をどうたえしのぶことができましょう。たいていの少年ならば、さびしさとおそろしさに、絶望のあまりシクシクと泣きだしたことでありましょう。

年紀輕輕又怎可能面對如此可怕的境況?換作是一般孩子,這時大概已經因為淒涼害怕而絶望地淘哭。

しかし、小林少年は泣きもしなければ、絶望もしませんでした。彼はけなげにも、まだ、二十面相に負けたとは思っていなかったのです。

然而小林沒有哭泣也不感絶望。他非常勇敢,即使面對逆境也沒有認定已經敗在二十面相手上。

やっと腰の痛みがうすらぐと、少年がまず最初にしたことは、変装のやぶれの下にかくして、肩からさげていた小さなズックのカバンに、ソッとさわってみることでした。

當腰痛稍為緩和後,小林首先伸手到為喬裝所穿的破衣服下,嘗試輕撫掛在肩上的布包。

「ピッポちゃん、きみは、ぶじだったかい。」

みょうなことをいいながら、上からなでるようにしますと、カバンの中で何か小さなものが、ゴソゴソと動きました。

「波波,你沒事吧?」小林奇怪地說,同時用手從上而下地撫摸布包。這時布包𥚃一件細小的東西微微動起來。

「ああ、ピッポちゃんは、どこも打たなかったんだね。おまえさえいてくれれば、ぼく、ちっともさびしくないよ。」

「波波,你沒受傷吧?只要你在我身旁,我就不會感覺寂寞。」

ピッポちゃんが、べつじょうなく生きていることをたしかめると、小林少年は、やみの中にすわって、その小カバンを肩からはずし、中から万年筆型の懐中電燈をとりだして、その光で、床に散らばっていた六つのダイヤモンドと、ピストルをいあつめ、それをカバンにおさめるついでに、その中のいろいろな品物を紛失していないかどうかを、念入りに点検するのでした。

確認波波沒有受傷後,小林在黑暗中坐起來。他從肩上取下那細小的布包,從布包裡拿出一支鋼筆型手電筒,藉著光線拾起散落地上的六顆鑽石和手槍,把它們放進布包,同時細心檢查布包裡的東西有沒有遺失掉。

そこには、少年探偵の七つ道具が、ちゃんとそろっていました。むかし、武蔵坊弁慶という豪傑は、あらゆるの道具を、すっかり背中にせおって歩いたのだそうですが、それを、「弁慶の七つ道具」といって、今に語りつたえられています。小林少年の「探偵七つ道具」は、そんな大きな武器ではなく、ひとまとめにして両手ににぎれるほどの小さなものばかりでしたが、その役にたつことは、けっして弁慶の七つ道具にもおとりはしなかったのです。

少年偵探的七件工具依然好好的放在布包內。傳說古代英雄武藏坊弁慶總愛把他的武器全都背在背上。這些武具被後世稱為「弁慶七武具」。然而小林這套「偵探七工具」卻並非甚麼大型武器,而是只靠一雙手就能全部拿起的細小工具,但它們的功用卻絶不下於弁慶七武具。

まず万年筆型懐中電燈。夜間の捜査事業には燈火が何よりもたいせつです。また、この懐中電燈は、ときに信号の役目をはたすこともできます。

首先是鋼筆型手電筒。夜間進行搜索時,燈光至為重要,而且手電筒在需要時還可作為發訊號之用。

それから、小型の万能ナイフ。これにはのこぎり、はさみ、きりなど、さまざまの刃物類が折りたたみになってついております。

還有就是小型萬能刀,刀身同時藏有鋸子、剪刀和錐子等不同利器。

それから、じょうぶな絹ひもで作ったなわばしご、これはたためば、てのひらにはいるほど小さくなってしまうのです。そのほか、やっぱり万年筆型の望遠鏡、時計、磁石、小型の手帳と鉛筆、さいぜん賊をおびやかした小型ピストルなどがおもなものでした。

還有就是利用堅韌繩子造成的繩梯。繩梯折叠時小得可以收藏在掌心內。此外還有鋼筆型望遠鏡、鐘錶、磁石、小型筆記簿及鉛筆,以及用作威嚇賊人的小型手槍等重要東西。

いや、そのほかに、もう一つピッポちゃんのことをわすれてはなりません。懐中電燈に照らしだされたのを見ますと、それは一羽のハトでした。かわいいハトが身をちぢめて、カバンのべつの区画に、おとなしくじっとしていました。

不,除此以外,不可不提的還有波波。在手電筒的光線下,可以看出波波原來是隻鴿子。這隻鴿子乖乖縮著身體,留在布包的某個格子內。

「ピッポちゃん。きゅうくつだけれど、もう少しがまんするんだよ。こわいおじさんに見つかるとたいへんだからね。」

小林少年はそんなことをいって、頭をなでてやりますと、ハトのピッポちゃんは、そのことばがわかりでもしたように、クークーと鳴いて返事をしました。

「波波,布包雖然有點狹小,但你多忍耐一會吧。要是被那個可怕的大叔發現就麻煩了。」小林輕撫波波的頭說道。鴿子波波也好像聽懂他的話一樣發出「咕咕」的叫聲回應。

ピッポちゃんは、少年探偵のマスコットでした。彼はこのマスコットといっしょにいさえすれば、どんな危難にあっても大じょうぶだという、信仰のようなものを持っていたのです。

波波是少年偵探的吉祥物。猶如信仰一樣,他深信只要跟這吉祥物一起,無論多危險的境況也能化險為夷。

そればかりではありません。このハトはマスコットとしてのほかに、まだ重大な役目を持っていました。探偵の仕事には、通信機関が何よりもたいせつです。そのためには、警察にはラジオをそなえた自動車がありますけれど、ざんねんながら私立探偵にはそういうものがないのです。

不僅如此,除了作為吉祥物外,這鴿子還有一個重大作用。進行偵查工作時,通訊工具比任何東西都重要。警方也因此配備有附設無線電通訊器的警車,然而私家偵探卻可惜沒有這種東西。

もし洋服の下へかくせるような小型ラジオ発信器があればいちばんいいのですが、そんなものは手にはいらないものですから、小林少年は伝書バトという、おもしろい手段を考えついたのでした。

假若可以擁有可藏於衣服下的小型無線電通訊器當然是最好不過,然而因為偵探沒有這種東西,於是小林便想出飛鴿傳書這個有趣的方法來。

いかにも子どもらしい思いつきでした。でも、子どものむじゃきな思いつきが、ときには、おとなをびっくりさせるような、効果をあらわすことがあるのです。

這想法真的非常孩子氣。然而孩子天真的想法有時也挺管用,即使成年人有時也會被他們嚇一跳。

「ぼくのカバンの中に、ぼくのラジオも持っているし、それからぼくの飛行機も持っているんだ。」

小林少年は、さもとくいそうに、そんなひとりごとをいっていることがありました。なるほど、伝書バトはラジオでもあり、飛行機でもあるわけです。

「我的布包裡有我的無線電通訊器,也有我的飛機。」小林以往曾經自豪地跟自己這樣說。確實如此,傳信鴿不單是無線電通訊器,也是飛機。

さて、七つ道具の点検を終わりますと、彼は満足そうにカバンを衣の中にかくし、つぎには懐中電燈で、地下室のもようをしらべはじめました。

小林逐一檢查他的七件工具後,很安心似的把布包放回衣服內,然後開始利用手電筒來看清地下室的情況。

地下室は十畳敷きほどの広さで、四ほうコンクリートの壁につつまれた、以前は物置きにでも使われていたらしい部屋でした。どこかに階段があるはずだと思って、さがしてみますと、大きな木のはしごが、部屋のいっぽうの天井につりあげてあることがわかりました。出入り口をふさいだだけではたりないで、階段までとりあげてしまうとは、じつに用心ぶかいやり方といわねばなりません。このちょうしでは、地下室から逃げだすことなど思いもおよばないのです。

地下室大約有十叠大小,四面的牆壁都是混凝土所建。看來以往這裡曾經用作儲物室之用。小林心想這裡總有樓梯吧。一找之下,發現天花板一方吊著一張大木梯。堵住出口還不夠,梯子也被拉起來,賊人可說是確實考慮周詳。根據這狀況,實在難以想像怎樣才能逃離這地下室。

部屋のすみに一のこわれかかった長イスがおかれ、その上に一枚の古毛布がまるめてあるほかには、道具らしいものは何一品ありません。まるで牢獄のような感じです。

房間一角放有一張殘舊長凳,上面捲放著一張舊毛毯。除此以外就沒有其他東西,感覺全然就是個監獄。

小林少年は、その長イスを見て、思いあたるところがありました。

小林望著這張長凳時想起一件事。

「羽柴壮二君は、きっとこの地下室に監禁されていたんだ。そして、この長イスの上でねむったにちがいない。」

「羽柴壯二肯定是囚禁在這地下室內,而且還睡在這張長凳上。」

そう思うと、何かなつかしい感じがして、彼は長イスに近づき、クッションをおしてみたり、毛布をひろげてみたりするのでした。

想到這裡,他心底生起一陣親近的感覺。他走近長凳,按了按座墊,掀開了毛毯。

「じゃ、ぼくもこのベッドでひとねむりするかな。」

大胆不敵の少年探偵は、そんなひとりごとをいって、長イスの上に、ゴロリと横になりました。

「那麼我也在這張床上睡一覺吧。」天不怕地不怕的少年偵探如此自言自語,然後躺在長凳上。

万事は夜が明けてからのことです。それまでにじゅうぶん鋭気をやしなっておかねばなりません。なるほど、理くつはそのとおりですが、このおそろしい境遇にあって、のんきにひとねむりするなんて、ふつうの少年には、とてもまねのできないことでした。

萬事都留待天亮再打算,在這以前必須養精蓄銳。雖然道理是這樣說,然而在這種可怕的情形下依然能輕鬆去睡,這可不是一般小孩能做到的事。

「ピッポちゃん、さあ、ねむろうよ。そして、おもしろい夢でもみようよ。」

小林少年は、ピッポちゃんのはいっているカバンを、だいじそうにだいて、やみの中に目をふさぎました。そしてまもなく、長イスの寝台の上から、すやすやと、さも安らかな少年の寝息が聞こえてくるのでした。

「波波,快來睡覺,做個好夢。」小林輕拍波波身處的布袋,在漆黑中合上雙眼。過了沒多久,長凳上已經傳來小孩安穩睡覺的呼吸聲。


第十一部份完﹙待續﹚

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怪人二十面相(一.序章)
怪人二十面相(二.捕獸器)
怪人二十面相(三.是人?是魔?)
怪人二十面相(四.魔術師)
怪人二十面相(五.池塘中)
怪人二十面相(六.樹上的怪人)
怪人二十面相(七.壯二的下落)
怪人二十面相(八.少年偵探)
怪人二十面相(九.佛像的奇跡)
怪人二十面相(十.陷阱)
怪人二十面相(十一.七件工具)

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