【怪人二十面相】(八.少年偵探)江戶川亂步|日漢對照




在舞台劇「少年探偵團」中飾演少年偵探小林芳雄的佐藤永典



(假若這是閣下首次進入這網誌,歡迎從故事的第一部分開始看。)
怪人二十面相(一.序章)


作品︰ 怪人二十面相(八.少年偵探)
作者︰ 江戶川亂步
翻譯︰ 小說熊 (日本小說翻譯室)
原文︰ 青空文庫【怪人二十面相】

青年運転手を帰すと、ただちに、主人の壮太郎氏夫妻、近藤老人、それに、学校の用務員さんに送られて、車をとばして帰ってきた早苗さんもくわわって、奥まった部屋に、善後処置の相談がひらかれました。もうぐずぐずしてはいられないのです。十時といえば、八―九時間しかありません。

駕駛汽車的青年回去以後,主人壯太郎夫婦,近藤老管家,以及由校工飛車接回來的早苗隨即到內廳商議如何處理此事。離開十時只有八九個小時,事情已經刻不容緩。

「ほかのものならばかまわない。ダイヤなぞお金さえ出せば手にはいるのだからね。しかし、あの観世音像だけは、わしは、どうも手ばなしたくないのだ。ああいう国宝級の名作を、賊の手などにわたしては、日本の美術界のためにすまない。あの彫刻は、この家の美術室におさめてあるけど、けっしてわしの私有物ではないと思っているくらいだからね。」

「假若是別的東西那還無所謂,反正鑽石之類的東西,只要有錢就能買到。但唯獨這個觀世音像,我卻無論如何也不能讓人拿走。假若讓這件國寶級的寶物交到賊人手上,我就太對不起日本美術界了。因為那座彫像雖然放在我們家中的收藏室,但我卻從來沒有把它視作自己的東西。」

壮太郎氏は、さすがにわが子のことばかり考えてはいませんでした。しかし、羽柴夫人は、そうはいきません。かわいそうな壮二君のことでいっぱいなのです。

壯太郎心裡顧慮的不只是自己兒子。然而羽柴夫人卻不這樣想,她滿腦子都只想著可憐的壯二。

「でも、仏像をわたすまいとすれば、あの子が、どんなめにあうかわからないじゃございませんか。いくらたいせつな美術品でも、人間の命にはかえられないとぞんじます。どうか警察などへおっしゃらないで、賊の申し出に応じてやってくださいませ。」

「但要是我們不把觀世音像交出,壯二不知還要受多少苦?無論這件美術品有多珍貴,總不能跟人命相比。老爺,求你不要報警,就答應賊人的要求吧。」

おかあさまのまぶたの裏には、どこともしれぬまっくらな地下室に、ひとりぼっちで泣きじゃくっている壮二君の姿が、まざまざとうかんでいました。今晩の十時さえ待ちどおしいのです。たったいまでも、仏像とひきかえに、早く壮二君をとりもどしてほしいのです。

壯二母親的眼內清晰浮現出壯二在某個不知名的黑暗地牢內獨自抽泣的情境。她甚至連今晚十時都等不及,恨不得這就交出觀世音像,讓壯二能早點回來。

「ウン、壮二をとりもどすのはむろんのことだが、しかし、ダイヤを取られたうえに、あのかけがえのない美術品まで、おめおめ賊にわたすのかと思うと、ざんねんでたまらないのだ。近藤君、何か方法はないものだろうか。」

「嗯,我們當然要救壯二。但那賊人不單拿去鑽石,還圖謀這件稀世之寶。當我想到要把觀世音像交給這個得寸進尺的賊人時,我真的好不甘心。近藤,你有甚麼辦法嗎?」

「そうでございますね。警察に知らせたら、たちまち事があらだってしまいましょうから、賊の手紙のことは今晩十時までは、外へもれないようにしておかねばなりません。しかし、私立探偵ならば……。」

老人が、ふと一案を持ちだしました。

「嗯,確實這樣。要是通知警方,事情就要立即鬧大,所以今天晚上十時以前,賊人來信的事是絶不能向外洩露的。但假若我們找私家偵探的話 ……」老管家突然提出這建議。

「ウン、私立探偵というものがあるね。しかし、個人の探偵などにこの大事件がこなせるかしらん。」

「嗯,世上確實還有私家偵探。但這麼嚴重的事件,私家偵探依靠個人力量能解決嗎?」

「聞くところによりますと、なんでも東京にひとり、えらい探偵がいると申すことでございますが。」

老人が首をかしげているのを見て、早苗さんが、とつぜん口をはさみました。

「おとうさま、それは明智小五郎探偵よ。あの人ならば、警察でさじを投げた事件を、いくつも解決したっていうほどの名探偵ですわ。」

「聽說東京有個本領不少的偵探,名字叫 ……」

看見老管家拼命在想,早苗突然插嘴:「爸爸,是偵探明智小五郎啊。他是個很有名氣的偵探,至今已經解決多宗警方束手無策的案件呢。」

「そうそう、その明智小五郎という人物でした。じつにえらい男だそうで、二十面相とはかっこうの取り組みでございましょうて。」

「對!對!就是明智小五郎。聽聞這男子真的很了不起,跟二十面相大概不相伯仲吧。」

「ウン、その名はわしも聞いたことがある。では、その探偵をそっと呼んで、ひとつ相談してみることにしようか。専門家には、われわれに想像のおよばない名案があるかもしれん。」

「嗯,這個名字我也曾聽過。那麼就悄悄找那偵探來商議一下吧。作為專家,他或許會想到我們想不到的好主意來。」

そして、けっきょく、明智小五郎にこの事件を依頼することに話がきまったのでした。

他們最終決定找明智小五郎來處理此事。

さっそく、近藤老人が、電話帳をしらべて、明智探偵の宅に電話をかけました。すると、電話口から、子どもらしい声で、こんな返事が聞こえてきました。

近藤老管家立即翻查電話簿,然後致電到明智偵探的住所。接通以後,電話另一端傳來孩子的聲音。

「先生はいま、ある重大な事件のために、外国へ出張中ですから、いつお帰りともわかりません。しかし、先生の代理をつとめている小林という助手がおりますから、その人でよければ、すぐおうかがいいたします。」

「老師現正處理一宗重大案件所以身處外地,何時回來還未知道。但是代理老師事務的小林助手卻在這裡。若果沒問題,小林助手這就可以前往府上拜訪。」

「ああ、そうですか。だが、ひじょうな難事件ですからねえ。助手の方ではどうも……。」

近藤支配人がちゅうちょしていますと、先方からは、おっかぶせるように、元気のよい声がひびいてきました。

「助手といっても、先生におとらぬ腕ききなんです。じゅうぶんご信頼なすっていいと思います。ともかく、一度おうかがいしてみることにいたしましょう。」

「啊,是這樣嗎?但這件事非常棘手。助手的話恐怕……」當近藤管家有些猶豫之際,對方用響亮的聲音打斷他的話。

「雖說是老師的助手,但他的本領其實不下老師,你大可放心。總而言之,就讓他先到府上談談吧。」

「そうですか。では、すぐにひとつご足労くださるようにお伝えください。ただ、おことわりしておきますが、事件をご依頼したことが、相手方に知れてはたいへんなのです。人の生命に関することなのです。じゅうぶんご注意のうえ、だれにもさとられぬよう、こっそりとおたずねください。」

「是這樣嗎?那就請你通傳一聲,請他來一趟吧。但我事先聲明,這次找你們處理這事,要是讓對方知道就不妙。因為性命攸關,務請小心行事,悄悄地來,不能讓人知道。」

「それは、おっしゃるまでもなく、よくこころえております。」

「這個不用你說我們也當然知道。」

そういう問答があって、いよいよ小林という名探偵がやってくることになりました。

他們一問一答,最終確定讓這位小林名偵探前來商議。

電話が切れて、十分もたったかと思われたころ、ひとりのかわいらしい少年が、羽柴家の玄関に立って、案内をこいました。秘書が取りつぎに出ますと、その少年は、

「ぼくは壮二君のお友だちです。」

と自己紹介をしました。

電話掛斷後約十分鐘,一名可愛的少年站在羽柴家的大門前求見。秘書走出去查探。那名少年自我介紹說:「我是壯二的朋友。」

「壮二さんはいらっしゃいませんが。」

と答えると、少年は、さもあらんという顔つきで、

「おおかた、そんなことだろうと思いました。では、おとうさんにちょっと会わせてください。ぼくのおとうさんからことづけがあるんです。ぼく、小林っていうもんです。」

と、すまして会見を申しこみました。

「壯二少爺不在呀。」秘書回答說。

「我早料到是這樣。那就請你讓我見一見壯二的父親吧。我姓小林,家父吩咐我帶個口訊來。」那少年擺出一副對一切都瞭如指掌的表情要求接見。

秘書からその話を聞くと、壮太郎氏は、小林という名に心あたりがあるものですから、ともかく、応接室に通させました。

因為對小林這個名字早已心中有數,壯太郎聽到秘書傳話以後就讓少年來到客廳。

壮太郎氏がはいっていきますと、りんごのようにつやつやしたほおの、目の大きい、十二―三歳の少年が立っていました。

壯太郎走進客廳時,看見廳內站著一位兩頰圓潤如蘋果、擁有一雙大眼睛的十二三歲少年。

「羽柴さんですか、はじめまして。ぼく、明智探偵事務所の小林っていうもんです。お電話をくださいましたので、おうかがいしました。」

少年は目をくりくりさせて、はっきりした口調でいいました。

「閣下是羽柴先生嗎?初次見面,讓我自我介紹。我是明智偵探社的小林。因為接到府上來電,所以專誠拜訪。」少年的眼睛滴溜溜地轉動,字正腔圓地說。

「ああ、小林さんのお使いですか。ちとこみいった事件なのでね。ご本人に来てもらいたいのだが……。」

壮太郎氏がいいかけるのを、少年は手をあげてとめるようにしながら答えました。

「いえ、ぼくがその小林芳雄です。ほかに助手はいないのです。」

「呀,你是小林先生派來的嗎?因為事情有點複雜,可否勞煩他本人親身 …」

壯太郎還沒說完,少年已經把手輕舉打斷他的話:「不,老師沒有別的助手,我就是那位小林芳雄。」

「ホホウ、きみがご本人ですか。」

「啊!你就是他本人?」

壮太郎氏はびっくりしました。と同時に、なんだか、みょうにゆかいな気持になってきました。こんなちっぽけな子どもが、名探偵だなんて、ほんとうかしら。だが、顔つきやことばづかいは、なかなかたのもしそうだわい。ひとつ、この子どもに相談をかけてみるかな。

壯太郎嚇了一跳,同時也出奇地感覺有趣。這樣一個小孩竟然是名偵探,不是說笑吧?但他的表情和語氣看來卻又挺可靠。壯太郎心想姑且跟這孩子談談吧。

「さっき、電話口で腕ききの名探偵といったのは、きみ自身のことだったのですか。」

「你就是剛才電話裡所說那位很有本領的名偵探嗎?」

「ええ、そうです。ぼくは先生から、るす中の事件をすっかりまかされているのです。」

少年は自信たっぷりです。

「對,就是我。老師不在的時候,他都是委託我代他處理案件的。」少年充滿自信地說。

「今、きみは、壮二の友だちだっていったそうですね。どうして壮二の名を知っていました。」

「聽說剛才你說自己是壯二的朋友。你是怎麼知道壯二的名字的?」

「それくらいのことがわからないでは、探偵の仕事はできません。実業雑誌にあなたのご家族のことが出ていたのを、切りぬき帳でしらべてきたのです。電話で、人の一命にかかわるというお話があったので、早苗さんか、壮二君か、どちらかがゆくえ不明にでもなったのではないかと想像してきました。どうやら、その想像があたったようですね。それから、この事件には、例の二十面相の賊が、関係しているのではありませんか。」

小林少年は、じつにこきみよく口をききます。

「如果連這點小事都查不來,我又怎能當偵探呢?我是從商業雜誌的剪報中查出閣下一家的狀況的。在電話中你們說性命攸關,所以我估計早苗小姐或壯二少爺二人中或許有一人巳經失踪。看來我沒猜錯。而且,這事還跟二十面相那賊人有關吧。」小林確實口齒伶俐。

なるほど、この子どもは、ほんとうに名探偵かもしれないぞと、壮太郎氏はすっかり感心してしまいました。

壯太郎衷心佩服,心想這孩子或許真是貨真價實的名偵探。

そこで、近藤老人を応接室に呼んで、ふたりで事件のてんまつを、この少年にくわしく語り聞かせることにしたのです。

於是壯太郎把近藤老管家叫到客廳來,二人把事情始末詳細敍述給少年知道。

少年は、急所急所で、短い質問をはさみながら、熱心に聞いていましたが、話がすむと、その観音像を見たいと申し出ました。そして、壮太郎氏の案内で、美術室を見て、もとの応接室に帰ったのですが、しばらくのあいだ、ものもいわないで、目をつむって、何か考えごとにふけっているようすでした。

少年仔細聆聽,同時在關鍵地方上略加提問。聽完以後,少年要求看一看那座觀世音像。於是壯太郎把他引到收藏室去看,然後再回到剛才的客廳。少年闔上雙眼沉默了一會,好像在沉思甚麼似的。

やがて、少年は、パッチリ目をひらくと、ひとひざ乗りだすようにして、意気ごんで言いました。

終於,少年突然睜開眼睛,身子微微前傾興奮地說。

「ぼくはひとつうまい手段を考えついたのです。相手が魔法使いなら、こっちも魔法使いになるのです。ひじょうに危険な手段です。でも、危険をおかさないで、手がらをたてることはできませんからね。ぼくはまえに、もっとあぶないことさえやった経験があります。」

「我想到一個方法。對方既然是魔術師,那麼我們也變成魔術師吧。這方法雖然非常危險,但假若不冒險,我們就無法找到線索。話說回來,比這更危險的事我也曾經幹過。」

「ホウ、それはたのもしい。だがいったいどういう手段ですね。」

「啊!那就好了。到底是甚麼方法?」

「それはね。」

小林少年は、いきなり壮太郎氏に近づいて、耳もとに何かささやきました。

「是這樣的 …」少年突然靠近壯太郎,在他耳邊竊竊私語。

「え、きみがですか。」

壮太郎氏は、あまりのとっぴな申し出に、目をまるくしないではいられませんでした。

「啊!由你來幹嗎?」壯太郎忍不住睜大雙眼,心想這建議太瘋狂了。

「そうです。ちょっと考えると、むずかしそうですが、ぼくたちには、この方法は試験ずみなんです。先年、フランスの怪盗アルセーヌルパンのやつを、先生がこの手で、ひどいめにあわせてやったことがあるんです。」

「沒錯是我。這方法想來有點難辦,但其實我們也不是沒曾試過。那一年,法國怪盜阿森.羅蘋那傢伙就是這樣栽在老師手上的。」

「壮二の身に危険がおよぶようなことはありませんか。」

「這樣壯二的處境不會變得更危險嗎?」

「それは大じょうぶです。相手が小さな泥棒ですと、かえって危険ですが、二十面相ともあろうものが、約束をたがえたりはしないでしょう。壮二君は仏像とひきかえにお返しするというのですから、危険がおこるまえにちゃんとここへもどっていらっしゃるにちがいありません。もしそうでなかったら、そのときには、またそのときの方法があります。大じょうぶですよ。ぼくは子どもだけれど、けっしてむちゃなことは考えません。」

「不用擔心。假若對方只是無名小卒,那樣反倒危險。但身為二十面相,他可不會不守信用。他收到觀世音像後就會把壯二少爺送回來,在發生危險以前壯二少爺必然已經安全回來。假若不是這樣,我們那時再打算吧。船到橋頭自然直,不用擔心。我雖然是個孩子,但絕不會胡亂行事的。」

「明智さんの不在中に、きみにそういう危険なことをさせて、まんいちのことがあってはこまるが。」

「但明智先生不在的時候讓你以身犯險,萬一出事我們可為難了。」

「ハハハ……、あなたはぼくたちの生活をごぞんじないのですよ。探偵なんて警察官と同じことで、犯罪捜査のためにたおれたら本望なんです。しかし、こんなことはなんでもありませんよ。危険というほどの仕事じゃありません。あなたは見て見ぬふりをしてくださればいいんです。ぼくは、たとえおゆるしがなくても、もうあとへは引きませんよ。かってに計画を実行するばかりです。」

「哈哈哈!閣下或許不太了解我們。偵探跟警方一樣,在調查期間遇險也是心甘情願的。但至今我們還沒試過遇上不測的情況,其實這工作也不是那麼危險。就請你當作不知情就可以,即使閣下不同意,我也會依計行事,不會作罷。」

羽柴氏も近藤老人も、この少年の元気を、もてあましぎみでした。

羽柴壯太郎和近藤老管家都對這位少年的幹勁甘拜下風。

そして、長いあいだの協議の結果、とうとう小林少年の考えを実行することに話がきまりました。

經過詳盡商議後,大家最終決定跟隨小林的想法去做。





第八部份完

快速連結

怪人二十面相(一.序章)
怪人二十面相(二.捕獸器)
怪人二十面相(三.是人?是魔?)
怪人二十面相(四.魔術師)
怪人二十面相(五.池塘中)
怪人二十面相(六.樹上的怪人)
怪人二十面相(七.壯二的下落)
怪人二十面相(八.少年偵探)
怪人二十面相(九.佛像的奇跡)
怪人二十面相(十.陷阱)
怪人二十面相(十一.七件工具)

江戶川亂步 其他作品
日本小說翻譯室 文章目錄
日本小說翻譯室 Facebook 專頁


延伸連結