【怪人二十面相】(九.佛像的奇跡)江戶川亂步|日漢對照




手持蓮花的觀音像


(假若這是閣下首次進入這網誌,歡迎從故事的第一部分開始看。)
怪人二十面相(一.序章)


作品︰ 怪人二十面相(九.佛像的奇跡)
作者︰ 江戶川亂步
翻譯︰ 小說熊 (日本小說翻譯室)
原文︰ 青空文庫【怪人二十面相】

さて、お話はとんで、その夜のできごとにうつります。

好了,就讓故事直接跳到當天晚上。

午後十時、約束をたがえず、二十面相の部下の三人のあらくれ男が、あけはなったままの、羽柴家の門をくぐりました。

晚上十時,二十面相手下的三名大漢根據約定,穿過敞開的大門走進羽柴家。

盗人たちは、玄関に立っている秘書などをしりめに、

「お約束の品物をいただきにまいりましたよ。」

と、すてぜりふを残しながら、間どりを教えられてきたとみえて、まよいもせず、ぐんぐん奥のほうへふみこんでいきました。

「我們是來拿取約定的東西的。」賊人睨了睨站在大門前的秘書,說罷就徑直走進屋裡,看來有人早就告知他們房子的格局。

美術室の入り口では、壮太郎氏と近藤老人とが待ちうけていて、賊のひとりに声をかけました。

「約束はまちがいないんだろうね。子どもはつれてきたんだろうね。」

收藏室前站著壯太郎和近藤老管家,他們問其中一名賊人:「你們會遵守約定吧。孩子已經帶來了吧。」

すると、賊はぶあいそうに答えました。

「ご心配にゃおよびませんよ。子どもさんは、もうちゃんと、門のそばまでつれてきてありまさあ。だがね、さがしたってむだですぜ。あっしたちが荷物を運びだすまでは、いくらさがしてもわからねえように工夫がしてあるんです。でなきゃあ、こちとらがあぶないからね。」

いいすてて、三人はドカドカ美術室へはいっていきました。

「不用擔心,孩子已經好好帶到大門附近。但你們不用去找,我們早就安排好,在我們搬走貨物以前,無論你們怎樣找也找不到的。要不是這樣安排,我們就危險了。」賊人冷淡地回答,說罷三人就一窩蜂走進收藏室內。

その部屋は土蔵のような造りになっていて、うす暗い電燈の下に、まるで博物館のようなガラス棚が、グルッとまわりをとりまいているのです。

房間的佈置就如倉庫一樣,在微弱燈光下,房間四周都擺放著博物館內常見的玻璃櫃。

よしありげな刀剣甲冑、置き物、手箱の類、びょうぶ、掛け軸などが、ところせましとならんでいるいっぽうのすみに、高さ一メートル半ほどの、長方形のガラス箱が立っていて、その中に、問題の観世音像が安置してあるのです。

房間內密密麻麻地擺放著一件又一件看來大有來頭的刀劍、盔甲、擺設、匣子、屏風和掛畫等物品。房間一角擺放著一個高約一米半的長型玻璃箱,箱內是賊人來取的觀世音像。

れんげの台座の上に、ほんとうの人間の半分ほどの大きさの、うす黒い観音様がすわっておいでになります。もとは金色まばゆいお姿だったのでしょうけれど、今はただ一面にうす黒く、着ていらっしゃるひだの多いも、ところどころすりやぶれています。でも、さすがは名匠の作、その円満柔和なお顔だちは今にも笑いだすかと思われるばかり、いかなる悪人も、このお姿を拝しては、合掌しないではいられぬほどにみえます。

蓮花座上盤坐一尊約真人一半大小的淺黑色觀世音像。原先大概是金光閃閃的佛像,這時全身都已變成淺黑色,皺摺的衣服上也同時出現了多處的破損。儘管如此,佛像卻不愧出自名家之手,柔和圓潤的臉龐上依然顯露笑容。無論是多窮凶極惡的壞蛋,只要看到佛像的姿態都會忍不住合什禮拜。

三人の泥棒は、さすがに気がひけるのか、仏像の柔和なお姿を、よくも見ないで、すぐさま仕事にかかりました。

三名賊人或許是作賊心虛,也沒有細看佛像的柔和姿態就立即開始搬運。

「ぐずぐずしちゃいられねえ。大いそぎだぜ。」

「不要慢吞吞,要快一點。」

ひとりが持ってきたうすぎたない布のようなものをひろげますと、もうひとりの男が、そのはしを持って、仏像のガラス箱の外を、ぐるぐると巻いていきます。たちまち、それとわからぬ布包みができあがってしまいました。

其中一人掀開帶來的一塊骯布,另一個男人拿著布的一端把佛像的玻璃箱團團圍住。不一會已經打包成一個看不出藏著甚麼的包裹。

「ほら、いいか。横にしたらこわれるぜ。よいしょ、よいしょ。」

「喂!橫放會弄碎的,聽到嗎?嗨喲。」

傍若無人のかけ声までして、三人のやつはその荷物を、表へ運びだします。

三人旁若無人地叫嚷,把包裹搬運到外邊去。

壮太郎氏と近藤老人は、それがトラックの上につみこまれるまで、三人のそばにつききって、見はっていました。仏像だけ持ちさられて、壮二君がもどってこないでは、なんにもならないからです。

壯太郎和近藤老管家跟在三人後面,一直監視直到他們把佛像搬到貨車上。要是他們拿走佛像卻不釋放壯二,那一切都是白幹了。

やがて、トラックのエンジンが、そうぞうしくなりはじめ、車は今にも出発しそうになりました。

沒多久,貨車響起喧鬧的引擎聲,看來貨車很快就要開動。

「おい、壮二さんはどこにいるのだ。壮二さんをもどさないうちは、この車を出発させないぞ。もし、むりに出発すれば、すぐ警察に知らせるぞ。」

「喂,壯二少爺在哪裡?壯二少爺回來以前,我們是不會讓你把貨車駛走的。要是硬闖,我們立即就要報警。」

近藤老人は、もう、一生けんめいでした。

近藤老管家為了壯二拼盡了全力。

「心配するなってえことよ。ほら、うしろを向いてごらん。坊ちゃんは、もうちゃんと玄関においでなさらあ。」

「不用擔心。看看後邊,你們的少爺早就在大門那邊。」

ふりむくと、なるほど、玄関の電燈の前に、大きいのと小さいのと、二つの黒い人かげが見えます。

他們回頭一看,果然大門的電燈下有著一大一小的兩個黑色人影。

壮太郎氏と老人とが、それに気をとられているうちに、

「あばよ……。」

トラックは、門前をはなれて、みるみる小さくなっていきました。

正當壯太郎和老管家發現那二人時,賊人也在這時說了一聲「我們走了…。」然後貨車就駛出大宅,轉眼變成一個小點走遠了。

ふたりは、いそいで玄関の人かげのそばへひきかえしました。

二人趕忙折回,來到大門前那二人的身邊。

「おや、こいつらは、さっきから門のところにいた親子の乞食じゃないか。さては、いっぱい食わされたかな。」

「啊,他們不就是剛才在門前的乞丐父子嗎?看來我們上當了。」

いかにもそれは親子と見えるふたりの乞食でした。両人とも、ぼろぼろのうすよごれた着物を着て、にしめたような手ぬぐいでほおかむりをしています。

二人怎麼看都只像一對乞丐父子。他們穿著骯髒破衣服,頭上纏著染成褐色的布。

「おまえたちはなんだ。こんなところへはいってきてはこまるじゃないか。」

「你們怎麼了?怎會走到這裡來!」

近藤老人がしかりつけますと、親の乞食がみょうな声で笑いだしました。

近藤老管家喝罵那對乞丐。這時乞丐父親響起一陣奇怪的笑聲。

「エヘヘヘヘヘ、お約束でございますよ。」

「哈哈哈!我是來遵守承諾的。」

わけのわからぬことをいったかと思うと、彼はやにわに走りだしました。まるで風のように、暗やみの中を、門の外へとびさってしまいました。

當他們心想這人怎麼在胡言亂語時,冷不防這人就突然奔跑起來。他彷如疾風一樣在漆黑中奔往門外。

「おとうさま、ぼくですよ。」

「爸!是我呀。」

こんどは子どもの乞食が、へんなことをいいだすではありませんか。そして、いきなり、ほおかむりをとり、ぼろぼろの着物をぬぎすてたのを見ると、その下からあらわれたのは、見おぼえのある学生服、白い顔。子ども乞食こそ、ほかならぬ壮二君でした。

這次說奇怪話的人是那名小乞丐。小乞丐突然拿下頭巾、脫下殘破衣服。這時再看,顯露出來的是一套眼熟的校服和雪白的臉龐。這小乞丐不是別人,正正就是壯二。

「どうしたのだ、こんなきたないなりをして。」

「發生甚麽事?怎麼弄得這麼骯?」

羽柴氏が、なつかしい壮二君の手をにぎりながらたずねました。

壯太郎握著他所惦念的壯二的手問道。

「何かわけがあるのでしょう。二十面相のやつが、こんな着物を着せたんです。でも、今までさるぐつわをはめられていて、ものがいえなかったのです。」

「二十面相那傢伙把我裝扮成這樣。我一直被他用東西塞在口裡,所以說不出話來。」

ああ、では今の親乞食こそ、二十面相その人だったのです。彼は乞食に変装をして、それとなく、仏像が運びだされたのを見きわめたうえ、約束どおり壮二君をかえして、逃げさったのにちがいありません。それにしても、乞食とは、なんという思いきった変装でしょう。乞食ならば、人の門前にうろついていても、さしてあやしまれないという、二十面相らしい思いつきです。

啊!剛才那個乞丐父親就是二十面相。他喬裝乞丐,必定是為了一方面靜靜監視佛像的運送過程,一方面遵從承諾釋放壯二,然後逃之夭夭。雖然這樣說,但他也真敢演啊!就連乞丐也演起來。假裝乞丐,即使在人家門前遊蕩也不會招人懷疑。這確實很像二十面相的做事風格。

壮二君はぶじに帰りました。聞けば、先方では、地下室にとじこめられてはいたけれど、べつに虐待されるようなこともなく、食事もじゅうぶんあてがわれていたということです。

壯二安全歸來。再經細問,得知壯二儘管關在地牢內,卻沒有受到虐待,賊人還好好的為他提供三餐。

これで羽柴家の大きな心配はとりのぞかれました。おとうさまおかあさまの喜びがどんなであったかは、読者諸君のご想像におまかせします。

這樣羽柴一家就放心了。父母二人到底有多高興,各位讀者就自行想像吧。

さていっぽう、乞食に化けた二十面相は、風のように羽柴家の門をとびだし、小暗い横町にかくれて、すばやく乞食の着物をぬぎすてますと、その下には茶色の十徳姿すがたのおじいさんの変装が用意してありました。頭はしらが、顔もしわだらけの、どう見ても六十をこしたご隠居さまです。

另一方面,喬裝乞丐的二十面相如疾風一樣跑出羽柴家大門後,就躲進暗黑的小巷裡並迅速脫下乞丐的衣服,乞丐的衣服下是預先穿好用作喬裝老者的褐色衣服。他一頭白髮,滿臉皺紋,怎麼看都像是一名年越六十的隱居老者。

彼は姿をととのえると、かくし持っていた竹のをつき、背中をまるめて、よちよちと、歩きだしました。たとえ羽柴氏が約束を無視して、追っ手をさしむけたとしても、これでは見やぶられる気づかいはありません。じつに心にくいばかりの用意周到なやりくちです。

他整理了儀容,拄著一事先藏好的手杖,彎著腰搖搖晃晃地走出來。即使壯太郎反悔派人前來追捕,這樣也不用擔心會被看穿。他如此思慮周密確實令人佩服。

老人は大通りに出ると、一台のタクシーを呼びとめて、乗りこみましたが、二十分もでたらめの方向に走らせておいて、べつの車に乗りかえ、こんどは、ほんとうのかくれがへいそがせました。

老人走出大街攔下一輛出租車。坐進車廂後使喚司機隨意駛往某方向,坐了二十分鐘後又轉乘另一輛出租車,這回才直接回到真正的藏身之所。

車のとまったところは、戸山ヶ原の入り口でした。老人はそこで車をおりて、まっくらな原っぱをよぼよぼと歩いていきます。さては、賊のくつは戸山ヶ原にあったのです。

出租車停在戶山原的入口處。老人在這裡下車,在漆黑草原上搖搖晃晃走起來。賊人的巢穴就在戶山原。

原っぱのいっぽうのはずれ、こんもりとした杉林の中に、ポッツリと、一軒の古い洋館が建っています。荒れはてて住みてもないような建物です。老人は、その洋館の戸口を、トントントンと三つたたいて、少し間をおいて、トントンと二つたたきました。

位於草原盡頭的繁茂杉樹林內,單獨豎立著一幢殘舊的西洋公館,看來這是一幢無人居住、被人廢棄的建築。老人走到西洋公館的大門前「咚、咚、咚」的敲了三下。沒過多久,門內也傳出「咚、咚」兩聲的敲門聲。

すると、これが仲間のあいずとみえて、中からドアがひらかれ、さいぜん仏像をぬすみだした手下のひとりが、ニュッと顔を出しました。

看來這是他們同伴間的暗號。門打開後,其中一名剛才前去搬運佛像的二十面相手下從門後探出頭來。

老人はだまったまま先に立って、ぐんぐん奥のほうへはいっていきます。廊下のつきあたりに、むかしは、さぞりっぱであったろうと思われる、広い部屋があって、その部屋のまんなかに、布をまきつけたままの仏像のガラス箱が、電燈もない、はだかろうそくの赤茶けた光に、照らしだされています。

老人沒說甚麼,率先快步走進屋內。走廊盡頭是一間昔日想必甚具氣派的寬闊房間,房間正中央擺放著依然用骯布纏著、存放著佛像的玻璃箱。房間內沒有燈光,只有發紅的燭光照射到玻璃箱上。

「よしよし。おまえたちうまくやってくれた。これはほうびだ。どっかへ行って遊んでくるがいい。」

「幹得好。這是賞錢,就拿去玩吧。」

三人の者に数枚の千円札をあたえて、その部屋を立ちさらせると、老人は、ガラス箱の布をゆっくりとりさって、そこにあったはだかろうそくを片手に、仏像の正面に立ち、ひらき戸になっているガラスのとびらをひらきました。

老人把數張千元鈔票交到三人手上。當三人離開以後,老人慢慢掲開裹布,單手拿起放在附近的蠟燭,然後站在佛像前把玻璃門打開。

「観音さま、二十面相の腕まえは、どんなもんですね。きのうは二百万円のダイヤモンド、きょうは国宝級の美術品です。このちょうしだと、ぼくの計画している大美術館も、まもなく完成しようというものですよ。ハハハ……、観音さま。あなたはじつによくできていますぜ。まるで生きているようだ。」

「觀音菩薩,你看我二十面相多厲害!昨天把價值二百萬日元的鑽石拿到手,今天又拿到這件國寶級的美術品。這樣下去,建立一個大型美術館的計劃很快就要達成。哈哈哈 … 觀音菩薩,你的手工真精細,真是栩栩如生。」

ところが、読者諸君、そのときでした。二十面相のひとりごとが、終わるか終わらぬかに、彼のことばどおりに、じつにおそろしい奇跡がおこったのです。

各位讀者,就在二十面相剛把自言自語的話說完後,就如他所說一樣,這時真的出現了一個驚人的奇跡。

木造の観音さまの右手が、グーッと前にのびてきたではありませんか。しかも、その指には、おきまりのハスの茎ではなくて一のピストルが、ピッタリと賊の胸にねらいをさだめて、にぎられていたではありませんか。

木造觀音像這時突然把右手往前伸。佛像手上拿著的並不是一般蓮花,而是一把手槍,手槍正好指向他的胸膛。

仏像がひとりで動くはずはありません。

佛像不可能自己動起來的。

では、この観音さまには、人造人間のような機械じかけがほどこされていたのでしょうか。しかし鎌倉時代の彫像に、そんなしかけがあるわけはないのです。すると、いったいこの奇跡はどうしておこったのでしょう。

難道這觀音像被人改裝成機械人之類的機械?但鎌倉時代的彫像又怎可能加上這種裝置呢。如果不是這樣,這奇跡到底又是怎麼回事?

だが、ピストルをつきつけられた二十面相は、そんなことを考えているひまもありませんでした。彼は「アッ。」とさけんで、たじたじとあとじさりをしながら、手むかいしないといわぬばかりに、思わず両手を肩のところまであげてしまいました。

然而,被手槍瞄準的二十面相也無閒多想,只是「呀!」的叫了一聲。然後畏縮地往後退,雙手不其然舉至肩膊附近示意投降。





第九部份完

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怪人二十面相(一.序章)
怪人二十面相(二.捕獸器)
怪人二十面相(三.是人?是魔?)
怪人二十面相(四.魔術師)
怪人二十面相(五.池塘中)
怪人二十面相(六.樹上的怪人)
怪人二十面相(七.壯二的下落)
怪人二十面相(八.少年偵探)
怪人二十面相(九.佛像的奇跡)
怪人二十面相(十.陷阱)
怪人二十面相(十一.七件工具)

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